ルリカケスの夜


夜、一屯崎の野営地では強まる風に加え、雨が降ってきた…

amami 093

呆然と海を眺めていたら、夕暮れ時を飛び越して周囲は既に夜。
月も星もない漆黒の夜空からは、風に翻弄された雨が不規則に落ちてくる。
テントを設営した後、ヨロヨロと天幕の下に移動し、少しぬるくなった缶ビールを飲む。
ゴンちゃんが手際良く作ってくれた手羽作入り塩ラーメンを啜って、ようやく身体が弛緩してきた。
ずっと緊張していたのがよく判る。
雨の中での焚火は諦め、MSRウィスパーライトでの調理だったが、自分はガソリンストーブのゴォーっと鳴り響く燃焼音が嫌いではない。
悪天候の夜、野営地に鳴り響く咆哮は、むしろ心強いくらいなのである。

 

ビールも在庫が底をつき、身体がもっと強い酒を要求してくる。
ようやく、無理を言って用意してもらった高岡酒造のルリカケスの出番となる。
この酒は焼酎ではなく、アルコール度数40度のラム酒である。
同様に黒糖焼酎もサトウキビを原料とする同類系統の蒸留酒だが、この琥珀色のルリカケスはどこか遠く離れた南の島の記憶を喚起する。

少し冷え込んできたので、お湯で割って飲み続けた。
ロウソクの明かりに照らされた液体は、カップの中でユラユラと揺らいでいる。
独特の甘い香りが立ち昇って、鼻腔をヒリヒリと刺激する。
自己紹介もロクに済ませていない我々は、一気呵成に様々なことを話し合った。

中年ビギナーの戯言に、深夜まで対応してくれたガイドの忍耐に敬意を表したい。

 


 

翌日、笠利湾は良く晴れた朝を迎えた。

朝から何もせず、ただ海を眺めているだけ。
本を読む気分でもなく、釣りをする気分でもない。
時折パチパチと木を燃やす音が聞こえてくる。
働き者のゴンちゃんはセッセと薪を集め、朝食の用意を始めていた。

朝食は、炊き込みご飯に味噌汁、トマト。
ご飯には昨夜の塩ラーメンのスープを使い、味噌汁はしっかり煮干しでダシを取っている。
深酒の翌朝には最高のおもてなしである。
野営生活において、生野菜は最高の贅沢のひとつであろう。
第一に保存が難しく、第二に嵩張るから運搬が面倒だ。
そんなわけで、ソロの時には面倒なのでいつもインスタントやレトルト食品ばかり食べている。
最近はフリーズドライ製品も充実してきたが、胸ヤケが酷くなることに大して変わりはない。

 

今日は対岸のコウトリ浜を目指す。


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