朝早く目が覚めてしまったので、毛鉤を少し巻いてから鬼怒川に向かう。
6時前には到着してしまったのだが、いくらなんでも早すぎたかもしれない…
あまりにも暇なので、散歩がてらポイント散策。
蟲はソコソコ出ているので、時間が経てばライズしてくれるだろう…か?
結局ヘロヘロになって元の場所に戻り、ペットボトルのお茶を飲んでいると後ろから声をかけられた。
「やっぱり此処にいると思ってたんですよ」
なんと、サムアップが印象的なあの方ではないか…!
宇都宮市内に在住とのことであるが、ご実家が近所らしい。
今日もお昼ごろまで時間を作って釣りに来たとのことである。
短期間に何度もあっているので、なんとも親近感を抱いてしまう。
当たり障りのない話をしていると突然、
「ラージーバーのリールって好きじゃないんですよねぇ…」
と自分のP1を指さしながら呟く。
まぁ、本当は自分もそうなのだが、一度この軽さとクセの付きにくさを体験してしまうと、小さなリールに戻ることは難しい。
シルクラインを使えば糸に変な癖は付きにくいのだが。
複雑な気持ちで彼の手元に何気なく視線を送ると…
「❕」
衝撃が走る。
「それ… ラス・ピークですか?」
「あれ?よく分かりましたね。初めてですよ、指摘されたのは。」
素っ気ないブランクに、控え目な金の飾り巻き。
お世辞も美しいとは言えない貧相な竿からビンビンと伝わってくる妖気。
伝説のフライロッドを目にして、呼吸をするのを忘れかけたくらいである。
「手元にはないんですけど、自分も1本持ってました。お金がなくて手放してしまったんですけど、あれは失敗だったなぁ。」
慢性金欠病という不治の病を患っていることから、泣く泣く売ってしまったのが今でも悔やまれる。
珈琲をご馳走してくれるというので、ご厚意に甘えることとする。
ストーブはコールマンのピーク1。
燃料はガソリンで安定の高出力である。
しこしことポンピングしているところを失礼して、ちょっと小用に…
戻ってくると、そこには驚愕の風景が…
ブンブンと振り回している右手コブシは炎に包まれており、パッと見はカンフー映画の特殊効果のようである。
ドラ〇ンボ〇ルのワンシーンを想像すると分かり易いかもしれない。
火の付いた手袋が容易に鎮火しないと見るや、サッと外してしまうのはさすがである。
しかも、何事もなかったのように珈琲のドリップを始めるあたりは只者ではない。
GASストーブのプレヒート時に多めに出てしまったガソリンが引火したのだろうか?
クールな横顔はその質問を拒絶しているように見えた…
その後、他人の不幸は蜜の味という話題から、フライの雑誌に投稿されている大木さんと判明。
成程、小さいフライリールが好きなわけだ。
ご馳走様でした。