逝く春を…

千住のヒトと惜しみけり。

怒涛のGWのトリを飾るのは、もちろん鬼怒川本流に決まっている。
シーズン最終盤が近づいているので、過ぎ行く春を惜しむような気分になるのだが、ドラヴィダ系の人と奥の細道を分け入ってポイントまで。
何かの罰ゲームだろうか?

ポイントに到着すると、すでに3名の毛鉤釣り人が…
朝の7時半にしてこの状況は異常なのではないだろうか?
聞けば、AM2:00に東京の自宅を出発したので、夜明け前には到着して釣りを開始していたとのこと。
ご苦労様です。

朝のライズも続いているようだが、まだ誰も釣れていないらしい。
どうやら3人は同行のようで、ひとりは川の真ん中でウェーディング中。
激アツの執念を感じるのだが、そもそもライズポイントで立ちんぼしてどうする?

少し上流に移動して拝見していると、三者三様ながらとてもキャストが上手い。
惜しむらくは魚の反応が全くないことなのだが、これが普通だから驚きには値しないのである。
突然、ウェーディング中の男が、
「その場所は渡って来ちゃった所だから、申し訳ないけど釣れないよ。ゴメンね。」
と助言してくれた。
この水量を渡るとは恐るべき足腰である。
同年代とお見受けしたのだが、アッチの方もナニなんだろうか?
恐るべし…

ちょっと下流でシッピングライズが発生すると、すかさず毛鉤をダウンクロスに投げ込む。
パシャっと一瞬釣れたように見えたのだが、鉤は虚しく宙を漂っている。
「フライパターンが違うのかなぁ…」
と呟いているのだが、理由はほかにあるように思う。

下流でもライズしているようなので、D系を連れ立って移動することにした。
けれども、その時川の中に立ちこんでいる男が、同行者の眼鏡君に向けて言い放った言葉が自分の耳に届いてしまった。
「荷物置いたところから10m位下のポイントに入っておけよ。そこライズするから…」

ん?
そこは今しがた我々が見学していた場所ではないか…
成程。
要は単純に追っ払われただけのようである。
会津大川でもそんな目に遭ったこともあるが、自分にはその辺の機微がよく分からない。
まぁ、好意的に思われてないことは確かなようである。

しかし、そこはクールに大人の対応が必要であろう。
延々と繰り返されるイミテーションの乱舞を尻目に、他のポイントの偵察に向かうこととする。
午前中から全力投球では身体がもたないしなぁ…

ひと通りポイントを見てきたのだが、何処も良さそうなライズは発見できず。
仕方がないので最初のプールに戻ってみると、3人組のうち2人は下流に移動したようだ。
100mくらい下流で色鮮やかな長い糸が、青空に映えて美しい。
D系にもご意見差し上げたのだが、キャス練は魚の居ないところでお願いします。

ぽっかり空いたポイントで待っていると、ライズを発見。
臨死体験中のオトコを起動し、いよいよ釣りを開始する。

とは言え、連日ひっきりなしに来訪者によって教育されている山女魚たち。
そう簡単に釣れないのが面白いところではある。
時には簡単に釣れてしまうこともあるのだが、基本的にはフライフィッシングの様々な構成要素を高いレベルで要求されるので、自分自身の課題が浮き彫りになってしまう。
特に投げることがキチンと出来ないと、門前払いされることは必至で、単に長い距離を投げられれば釣れるのかというと、有利ではあるが必ずしもそうではない。
狙った位置に毛鉤を入れるのは当然のこととして、それに繋がっているリーダーやティペットの形状をどうコントロールするかが重要である。
それでも無風のコンデションはめったにないのが普通なので、風とどう妥協するのかがカギとなってくる。

刻々と時間が過ぎてゆく中で、モンカゲロウのハッチが増えてきた。
先週は大胆にダンを捕食していた魚たちも今週は簡単に食べないようだが、夕暮れが迫ってくると状況は変わってきた。
手前のレーンでダンが食べられたことを確認し、素早くダンパターンを投射すると食ってきた!
尺前後はありそうな良いサイズの魚である。
グルグルとローリングを繰り返し、なかなか寄ってこない。
リールファイトにするかどうか迷っていると、足元近くでバレてしまった…

脱力して惚けていたら、背後から…
「今日は釣れるまで帰らないよ。夜通しやっても釣れるまで帰らないからね。そこんとこィヨロシク」
との宣言が。
エーちゃんかよ、剣さんかよ。
取り敢えず、モンカゲロウのダンパターンで釣れたことを話し魚を探す。
すると、少し離れた位置でライズを発見。

「ダン食ってる!チョッと上から流してみて。」

待つこと数秒。
水面が炸裂し、山女魚が下流に走る。
ローリング対策で竿を寝かせるようにアドバイスをし、ネットを構えて待機。
数分ファイトした後でネットに収まったのは、グラマラスな美しい山女魚だった。

「尺はあるよね?」
「いや、メジャーで測ったから27センチで間違いないよ」
「いやいや、絶対尺だ。目は逝っちゃってるけどね」
いやいやいや、逝ってしまっているのは貴殿でしょう…?

コーフン冷めやらぬ中、日が暮れた獣道を伝って車に戻る。
時計の針は19時を指していた。
随分長い一日だったが、魚が釣れたので全て良しとする。

遠くに見えるヘッドランプは3人組のようだ。
ドラヴィダ系の雄叫びに触発されたのか、真っ暗闇の中でも一心不乱に釣りしている。
強靭な下半身に支えられた、倫を絶する体力に脱帽である。

やっぱり、目は逝っちゃっているんだろうか…?
ブハハハハッ!

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