傲岸不遜なれど…

今週は本格的な梅雨空が続いている。
昨日は少し強く降ったようだが、曇天小雨の日々が続くと落ち着いていられないのである。

そういうワケで、午後から無理やり休暇を取得して一路鬼怒川へ。
いつもライズがあるとは限らないので、先日試したヤッチーニンフで流心脇を狙ってみる腹積もりである。

現場に到着してみると、一度ライズしただけで沈黙が続く。
昨日の激しい雨にもかかわらず、10センチ程度の増水しかしていない。
とは言え、厚い流れは立ち込むと怖い思いをしそうである。

取り敢えずヤッチーニンフスタイルで平瀬を狙うこととする。
自分が好きなポイントは流れが集まって出来た巨大なプールで、深い場所だと多分2メートル以上の水深がある。
なので、流れの筋を流そうとしても、最低1メートル以上タナを取らなければならない。

やっとのことで仕掛けを作り終え、第一投目。
「ん?」
思ったようにニンフが飛んでいかない。
何度試してもリーダーキャスト程度しか距離が出ないのだ。
勿論、力任せに振っても結果は同じかそれ以下で、力を入れるとコントロールが極端に難しくなる。

このシステムの肝は、重いニンフ2個つけても水面を保持するウキとのバランスにある。
空気抵抗や感度を考慮して現在の形に辿り着いたとのことであるが、多分ウキ下の長さは50センチ前後を想定して最適化してあるのではないだろうか?
ドロッパーまでの距離がそれ以内であると時、キャスティングすることは慣れればそれほど難しくない(と思うが、バックハンドを除く)。
今回のように、ウキからリードフライまで1.5m以上になると、キャスティング時にウキが空中での支点となり極端にフライのコントロールが困難になってしまうようである。

ライズもなくニンフも投げられないので、足元でサイト二ンフィング。
アブラッパヤが集まってくるのだが、毛鉤が大きくて咥えきれないようだ。
時間つぶしには良いかも知れないが、スレでかかるとかなり痛そうである。
そもそも山女魚を釣りに来たのではなかったのか…
雑魚とは言え、申し訳ないので早々に止めてしまった。

16時を過ぎて、上流側でライズを発見する。
散発ではあるのだが、本日最初のマトモな捕食活動である。
流下物に目を凝らすも、イマイチ良く判らない。
後ろの空間がほとんど取れないため川に立ち込まざるを得ないのだが、岸から1メートル進むだけでポコ沈付近まで水が来る。
目の前はドン深、流されたら怖いことになりそうである。

先日結果の出た毛鉤を投げ込んでも、全くの無視。
ここで一計を案じ、ガーベージコレクション(ゴミ毛鉤)をひと工夫してから投射すると…喰った!

次の瞬間、魚が大きくジャンプする。
山女魚らしからぬ対応に驚きながら、ローリングに備えて竿を横倒しに。
一気に下流に走ると思われたのだが、少し下って底にへばり付いている。

「あれ?そこで持久戦なの?」

今回は迷わずにリールファイトに備えラインを急いで巻き取ることとしたのだが、とにかく足元が悪すぎる。
動かない間に岸際にジリジリと摺り足で戻る(怖い)。

岸に上がる前に魚が一気に下流に走り出す。
リールの逆回転音が鳴り響き、巻き取った以上のラインが出ていくので焦る。
下流に障害物はないから、岸に上がることを優先し、コケない様に気を遣う。
連休明けに釣った魚よりパワーとスピードがあるのではないだろうか?

100メートル以上下流に強制移動させられ、何度も寄せては走られることの繰り返し。
次第に腕が痛くなってきた。

15分近く格闘して、やっとネットに収まったのは…

33センチの立派な山女魚!

何と傲岸不遜な面構えであろう。
最後の最後まで抵抗し、
「お前の思い通りには絶対にならない!」
という意思がビンビンに伝わってくる。

文章作法では、安易に自然を擬人化してはならないとのことであるが、自分もかく在りたいと思わせる魚に敬意を覚えてしまうのは自分だけではないだろう。
トコトン遣り切った魚は、案外ネットに入ると微動だにせず、潔さを感じさせてくれるものである。
半世紀以上生きても、まだ魚から教わることは沢山あるのであった。

こんなに素晴らしい魚がこれからも生き続けて欲しいて願って…
多謝!

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