一屯崎まで


2014年10月28日16時10分。
赤尾木の浜から漕ぎ始めると、徐々に風と波が強くなっていった…

amami 086

一屯崎を目指して、ノロノロと漕ぎ進む。
生活道具一式を満載したフネは、喫水が下がって安定性が向上している。
普段は左右にグラグラするフネの挙動に過敏に反応してしまい、ノンビリ海を楽しむということは少ない気がする。

そんな話をすると、「エスキモーロールなり、セルフリカバー系の技術を磨くことによって、気持に余裕が生まれます。また、練習の過程で得る感覚、例えばどこまで傾けられるとか、スカーリングで横になったままバランスを取るとか、何種類もレパートリーを増やしていくことによって、自然に身に付いたスキルが結構重要だったりします。」と、明確な回答。

ロールもリカバリーもロクに出来ない自分が、海でビクビクするのも当然の帰結である。

それでも10分ほど漕ぐと、幾分身体も解れてきて周りを眺める余裕も出てきた。
海からほど近い山の中腹に、一軒の瀟洒な佇まいの建物が…
何となく気になって尋ねると、空き家なのだという。
「東京出身の知人がこっちで料理店をやろうとしていて、最初はあの建物を候補にしていたのですが、結局止めました。それで、今は向こう側に店舗を建設中なんです。」と、反対側の芦徳方面を指差した。
ロケーションは悪くないし、何故だろうか?
「それは、ケンムンが出るからです。」
!!
うーむ、ちょっと波が高くなってきた…のである。

ケンムンは、河童の類似した妖怪で、沖縄のキジムナーと共に樹木(ガジュマル)の精霊であるとされている。
近年の乱開発によって住処を奪われたため、減少傾向にあるとされながらも、ここでは確固として存在している。
「妖怪なんて信じなければ構わないんでしょうけど、こっちの人達は現実問題として信じているワケだし…」
確かに客商売である以上、現地の人たちが嫌がる建物を店舗にするのは、土台無理な話である。

蛸が弱点とは、他人とは思えないのである…(因みに私は蛸が苦手)。


今日の野営地、一屯崎の砂浜が見えてきた。
上陸予定地点ではやや波が崩れており、ゴンちゃんから細かい指示が飛ぶ。
思えばこのような状況での離発着経験はかつて無い。
「自分が先に上がって待っていますから、同じ地点に真直ぐ入って来てく下さい。波に乗ってしまってはダメです。波がブレイクするタイミングを見計らって、崩れた直後に全力で漕いで一気に上陸して下さい。」

ガイドが先行する。
私にとっては緊張を強いられる状況でも、経験豊富な彼にとってはさざ波程度なのだろうか?
傍から見ていても、難なく上陸してフネを砂浜に引き上げた。
そして直ぐに引き返してきたかと思うと、膝あたりまで水に浸かって両腕を真直ぐ前に伸ばし、私の方に向かって大きく上下に振り始める。
ここに入って来いという意味なのだろう。

後方からのウネリを確認しようとしても、身体の硬い自分はロクに振り返ることが出来ない。
むしろ、無理に後方確認を試みると、変に身体を捩ってしまうことになり、かえってバランスを崩しかねないのである。
ウネリの周期をある程度考慮しつつ、前方の波の形状を注視するが、いくらタイミングを見計らっても、一向に”その時”が判らない。
迷っていても仕方がないので、意を決して上陸を開始する。

何とか無事上陸。
さらに風が強くなって、時折雨がパラついてきた。
ゴンちゃんは、プロの手際良さで天幕を設営し、早々と夕食の準備に取り掛かっている。
自分は呆然と海を眺めながら、素足で砂の感触を確かめていた。波が規則的にやって来る。

ルリカケスナイトが始まろうとしていた…


2014-10-28 16:57 奄美(英利湾)

トラック数 1
ポイント数 260

平面距離  2.9km
沿面距離  3.0km
記録時間 00:39:51

平均速度 4.4km/h
最高速度 6.3km/h

お疲れ様でした。

 


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