Gone With The Wind.


梅雨明け前の玄界灘を漕いできました。

最終日、玄界灘に面した無人の浜辺にて。朝焼けがとても綺麗な海である。

昨年、初めて訪れた玄界灘。
色んな意味で驚きの連続だった。

これまで団体様やツアーからは極力距離をおいて漕いできた。
特別な理由は無いけれども、人が多いと気疲れしてしまうのも理由の一つである。
結果的に単独行が多くなってしまうのは、当然の帰結である。

玄界灘に面した芥屋の大門へ。スケールの大きさに圧倒される。帆は風をはらんで、滑るように海を進む。人生は順風満帆とはいかないのだが…

ツアーに参加してみようと思ったのは、奄美大島に行った時のことである。
古い友人の後輩が現地でガイド業をやっているらしいと聞き、取り敢えずお願いしたことに端を発する。
自分以外に参加者のいないツーリングは、何とも贅沢な旅であった。
料理以外はソロの時と何ら変わりなく、碧い海を知悉した腕利きがアレコレとサポートしてくれるのである。

以来、単独行に対するこだわりは無くなった(と思う)。
寧ろそれ以上に、海を旅するノウハウを盗ませてもらう機会と捉え、積極的に参加させて貰っているのが現状であるが、ガイドの個性がツアーの組立に表れているのが興味深い。

特別にオーダーしたモツ鍋を作る玄界灘男こと、サザンワークス代表テツ松本氏。この味を知ってしまうと、今まで食べていた鍋がバカバカしくなってしまう。各分野における造詣が深く、森羅万象における引き出しの多さは白眉である。

玄界灘お任せツアーは、そんな自分の我儘を叶えてくれる稀有な旅である。
基本的に自分のことは全て自分で始末しなければならない。
今回は食事すらセルフという放任ぶりで、初日のモツ鍋だけが唯一の共同食であった。

森安君。始めた会ったときはベトコンかと思ったが、頼れる水先案内人である。少し痩せてスマートになっていた。今度、隠岐の特大鮑をお願いします。

当然のことだが、常時海を漕げるというワケではない。
自然環境に大きく左右される遊びだけに、どうにもならない状況に出くわすのは、或る意味当然である。
実際、終日テントに閉じ込められるのは憂鬱であるが、タープの下であっても大して変わりはない。

停滞中は本を読んだり、酒を啜って寝転んでいるしかないのが普通である。
それはそれで贅沢な時間の使い方ではあるものの、一日の長さを思わずにいられない。

2日目の朝。ゴロゴロと鳴りだした雷に伴い、風雨が野営地を駆け抜けてゆく。

そんな時、彼の状況把握は的確で、常に我々を退屈させない手札を用意している。
雨が降れば温泉に。
風が吹けばローカルプチグルメ。

縦横無尽にして、融通無碍である。

一体全体、玄界灘まで何しに来ているのだろう?醜悪な裸体を美しい浜辺で曝け出し、ただただ夕日を眺めながら酒を飲んでいるだけ。まぁ、そのために来ているのだから仕方がないのか…

自立して初めてツアー客を迎える前の晩、緊張のあまり何度も何度も吐いたと言いながら、焼酎をグビグビ飲むコゲ茶色の九州男児を見ていると、

「その夜も飲み過ぎていたんじゃないのか…?」

と、思ったりもする。

自炊。自分が好きなのはご飯と味噌汁に漬物があれば十分である。贅沢を言わせてもらえば、納豆と目玉焼きがあればパーフェクトである。

けれども、それは海という不確定要素の大きなフィールドで、プロとして参加者の安全を確保することが如何に重圧であるか…と云うことなのだろう。
今ではそんな素振りは微塵も感じられないのだが…
或る意味、中年へタレパドラーを目の当たりにしながら、何も言わないでいるということ自体に凄味を感じるのである。
それは絶対的な自信の裏返しなのか、それとも弟子に対する無言の圧力なのか…?

穏やかな波の音が絶え間なく聞こえてくる。

ムーンビーチと呼ばれている浜に上陸。昨年のクリスマスに届いたK1(The Last Yellow)の美しさにウットリする。どのくらい惚れ込んでいるかというと、昨夜はテントを張らずにハッチに潜り込んで就寝した程なのである。結果的には内部結露と暑さに堪らず目が覚めてアラックを張る羽目になったのだが、身をもって防水性と気密性の高さを経験することができた(のか?)。まぁ、ハッキリ言って馬鹿である。

と或る人物の話題になった。

その男は誰にも真似のできない単独行をやり遂げたようである。
同行のA君が、次は何をやろうとしてるんでしょうね…と呟く。

A君。早朝からテント内に侵入した蚊との戦いに疲れ果てた男。面白さの追求は他人の追従を許さない。快楽の求道者である…とのこと。

「うーん、彼にとって旅は目的ではないような気がする。多分、彼にしか見えない風景が見えているんだと思う。ただ、それが自分には何なのか判らない(判る必要も無いけどね)…」

と真面目に答える。

少し前までエロトーク全開だった男どもが黙りこむ。
いつの間にか、波の音が遠ざかる。

プロであるということは、仕事としてお金を稼ぐということに他ならない。
つまり、それは生きてゆくための手段であって、理由は後から色々付いてくるものだ。
プロであるがゆえに、無駄がないのは当たり前なのである…

芥屋の大門を過ぎて。
机島をゆく。

自分はズブの素人であるけれども、プロを目指しているワケではない。
楽しみの本質を誰にも邪魔されることなく追求したいだけなのだ。

森羅万象の本質を追及することが私の目的であって、それが何かの手段であってはならない。
それは大切なことや好きなことを、生活の糧にしないと決めた自分だけの矜持である。

TLYにセールを装着。風に吹かれながら、思いは膨らみ続けるばかり…

2017-07-08 14:38 芥屋の大門

トラック数 1
ポイント数 779

平面距離  9.1km
沿面距離  9.1km
記録時間 01:44:32

平均速度 5.2km/h
最高速度 9.1km/h 


2017-07-09 17:17 机島

トラック数  2
ポイント数  760

平面距離   8.7km
沿面距離   8.7km
記録時間    02:54:56

平均速度    3.0km/h
最高速度    8.2km/h


2017-07-10 10:28 唐泊漁港

トラック数  1
ポイント数  190

平面距離   2.2km
沿面距離   2.2km
記録時間    00:30:26

平均速度    4.2km/h
最高速度    7.5km/h

お疲れ様でした。


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ITOSHIMA EXPERIENCE


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