続・内房片道切符の旅


北風が少し落ち着いてきたような気がする。

お「いつもカヤックを漕げるとは限らないので、最近はアワビとかトコブシの貝殻を削って遊んでいるんですよ。」

私「ルアーの素材とかにもなっているんですよね。アワビとトコブシって大きさが違うだけなんですか?」

お「いや、違いますよ。貝の外側に穴が何個か並んでいるんですけど、突起している先に穴が開いているのがアワビで、トコブシは平面に穴が開いているという感じかな。」

私「味は違うんですか?」

お「煮付けとかにしちゃったら、同じような気がしますね。ほとんど変わらないかな。でもね、ヤスリで外側を削っていくときはそうでもないんだけど、丹念に仕上げてみるとそれぞれに個性があって面白いんですよ。アワビでもクロアワビとかは全然違った仕上がりになるし。ほら…」

と言って箱から取り出してくれたのは、名刺サイズのトコブシからB6サイズのアワビの貝殻。
丹念に研磨されて妖艶な光を放っているそれは、磨かれたことによって美しさを顕現させたというよりも、もともと輝きを内包しているということなのだろう。
房総半島でセカンドライフを満喫しているオヂさんから学ぶべきことは、自分が思っている以上に多いのかも知れない。

軽くストレッチをしてから出発。
風の向きも安定してきたので、帆を上げて勝浦から岩井海岸沖を一気に横断する。
さらに南無谷崎を越えて大房岬へ。
重く垂れこめた雲が秋晴れの予定だった空を埋め尽くしているが、気分は悪くない。

どうやら太腿の違和感は問題ないようである。
波は相変わらず一定の間隔で私を追いかけて来ては過ぎ去ってゆき、刻一刻と時は過ぎてゆく。


大六海岸を出艇してから、もう2時間以上漕ぎ続けている。
頭の中は空っぽで、何も考えることは無くなってしまった。
延々と同じ動作を繰り返すのみである。

いい加減、空腹に耐えかねて大房岬南側の浜に上陸。
手ごろな角材を拾ってきて、急拵えのベンチ兼テーブルとする。
炭酸麦汁の補給が最初の儀式であるのはいつもと同じ。

 

少し日が射してきた館山湾が美しい。
洲崎で分断された黒潮が湾内に入り込んで来るからなのか、海水がとても暖かい。
北側が遮られているため、眼前には風もなく穏やかな風景が広がっている。

ノンビリしていると、高台方面から小学生がやって来る。
引率の先生から送られてくる視線が何となく冷たいのは気のせいか?
「怪しいオジサンが居座っているせいで、子供たちが浜辺に近寄れないんだけど…」
暗に非難されているような気がするのは、平日遊んでいる後ろめたさなのか、或いは昔日の思い出が影を落としているからなのか…?

 

 


2018-10-18 15:05 浜金谷~那古船形

トラック数  3
ポイント数  1734

平面距離   19.9km
沿面距離   19.9km
記録時間    03:32:27
平均速度    5.6km/h
最高速度    7.7km/h

お疲れ様でした。

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