内房片道切符の旅


久しぶりのソロツーリング…

最近はプチツーリングと称して、つまみ食いのような距離しか漕いでいない。
それはそれでそれなりに楽しいのだが、ちょっと物足りない気がしていたことも事実。
ならば一日中漕いでみるか…と、ソロで内房へと向かった次第なのである。

 

出発は浜金谷駅近くの公園から。
K1を組立中に、釣り人と思わしきおとっつぁんに話しかけられる。

お「このフネは何キロ位あるの?」

私「20キロ位ですね。荷物を積んでも30キロ位かな…」

お「それなら俺でもなんとか運べるなぁ。折り畳めるのは便利だよなぁ。で、これからどこまで行くの?」

私「まだ決めてないんですけど、取り敢えず行けるところまで行こうかと。今は何が釣れるんですか?」

お「タコだよ。今日はイマイチだけど、食うならやるよ。」

タコはあまり好きではないので、丁重にお断りして準備を再開する。
貰ったところで、どうやって食べたらいいのか…

旅の楽しみのひとつは、行く先々で出会う人々との何気ない会話である。
一人でいるということは、相手にとっても話しかけ易い状況ということなのだろうか?
ソロはそんな機会が多い気がする。

予報では終日北寄りの風が吹くとのことから、玄界灘仕込みのセイルキットを装着することとした。
漕ぎだしてすぐに帆を上げてみるものの、なかなか順風満帆といかないことに四苦八苦するのは、自分の人生と同じである。
地形の影響なのか、風の向きが定まらない。
このため、風を受けるセイルの位置も目まぐるしく変化することに伴ってフネが予想外の動きをする。
その度に私のチキンハートは激しく高鳴るのである。

明鐘岬を過ぎてからは風向きが東北東に変わり、セイルの位置が右傾するように調整。
玄界灘男によれば真横に近い風でも、慣れれば風を捕まえることが出来るとのことなのだが、追波もあってカリカリにセッティングするのは心臓によろしくない。
従って、帆を畳んでしばらく様子を伺いながらパドリングする。

保田港を過ぎたあたりで、右太腿の裏側に違和感を感じる。
ピボットペダルの調整は良好だったので、変な漕ぎ方を強いられていたわけではない。
準備運動はしていないが、それはいつものことである。
理由は判らないけれども、このまま海上で足が攣ってしまったらどうなるのか?
アレコレ悩んでいても仕方がないので、取り敢えず昨年撤退した大六海岸に上陸することとする。

上陸して炭酸麦汁を飲んでいると、またしても見知らぬおとっつあんに話しかけられる。

お「どこから漕いできたんですか?」

私「浜金谷駅近くの公園から漕いで来ました。」

お「私もカヤックやるんですけど、最近はこの辺で鯛を狙っているんです。」

私「その辺ですれ違った船ではイカを釣っていると言ってました。」

お「スミイカ(コウイカのこと)でしょうね。美味しいからなぁ…」

本人の話によれば、定年後に湘南の平塚から富浦町に移住したのだという。
古民家を借りていたのだが、買い手が決まってしまい引っ越しを余儀なくされたことから、やってきた今日はこの辺りで物件を探しているとのこと。

お「こっちに来て地元のカヤッククラブに入れてもらったんですけど、なんと私が一番の若手なんですよ。」

私「やっぱり話題は年金とか、病気・介護の話になっちゃうんですか?」

お「そう、毎回同じ話題なので何とも刺激がなくてねぇ。みんな良い人なんだけど。」

住み慣れた土地を離れて辿り着いた場所であっても、そこに暮らす人々の悩みは同じということなのだろうか?
第2の人生と言えば聞こえはいいが、時計の針は確実に進んでいて決して戻ることはない。

続く…


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