コウトリ浜へ


2014年10月29日。
気持ちよく晴れた朝、コウトリ浜を目指す。

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朝食を済ませ、出発の準備をしている時に気が付いた。
スプレースカートパドリングシューズが無いのである。
昨日、着岸した後で波打ち際付近に置いたままだったのだが、どうやらそのまま波にさらわれてしまったようだ。
これまで海辺での野営経験が無かったため、潮位については無頓着だった。
今回、身を持って思い知らされたワケだが、何れにしてもちょっと高い授業料である。
海は与え、且つ奪う…と、云うことなのだろう。

ゴンちゃんの提案で、潮の流れに沿って紛失物が漂流していないかどうか確かめながら漕ぐことにする。
昨日よりも穏やかな笠利湾。
相変わらず無駄のないパドリングスタイルのゴンちゃん。
燦然と輝く、海と空の饗宴。
より完璧な世界は確実に存在すると云ったノーマン・マクリーンの炯眼。
そんなことをとりとめもなく考えながら、一頓崎を少し南下する。

が、例のケンムンが出没する地域に近づくと、やはり何処か腰下引けてしまう。
例の建物がチラついているのである。
早々に探索を切り上げ、コウトリ浜へ向かう提案をする。
午後は風が上がってくる予報とのことなので、早めに今日の野営地へ。

芦徳からコウトリ浜へは、一旦湾内を西に横断してから岸伝いに北上した。
途中、緑がかった海の色が急に神秘的な藍色に変わる。
以前、水の色についてのメカニズムは未だ解明されていない…と聞いた。
水深や光の具合で変化する絶妙のコントラストには、無色透明なハズの水の不思議が詰まっている。
ずっと海を眺めていただけでは到底解決しそうにない問題だが、このまま何時までも見とれてしまう美しさがある。
うーむ、この海を漕ぎたくてここまでやって来たんだな…と、妙に納得してしまう。

細長く伸びた岩場を廻ると、そこがコウトリ浜だった。
一屯崎と同じように半島の先端に広がる砂浜の野営地だが、こちらの方が奥行きも幅もあって広々としている。
浜の中央部には森から小さな沢が流れ込んでいるが、国土地理院の地図に記載はない。
浜辺はアダンの木がほとんどで、幸いにもガジュマルの大木はなさそうだ。
アダンの木の奥に隠れている石垣は、人が住んでいた頃の名残であるとのことだが、今はハブの棲家になっているのだろうか…?

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時計を見ると、まだ午前中だった。
少し漕ぎ足りない気分だったが、テントを設営し、濡れた衣類を干して乾かす。
ゴンちゃんは薪を集めに行ってしまったが、同時並行で昼食の準備を進めている。
風が幾分強くなってきたが、暑くも寒くもない快適な時間帯である。
申し訳ないとは思ったが、折り畳みの椅子に座ってボンヤリと海を眺めていた。
しばらくしてから泳ごうと考えたが、それよりも天気が良すぎてビールの在庫が気になって仕方がない
そこで、折角なのでニヤックを借りて対岸の龍郷までお使いに行くこととする。

「このフネはニンバス社の中でも評価が高くて、いつかはニヤックと云われているくらいの名艇なんです」
成程、スペック的にはFC社のK-1と同じくらいである。
「フォールディングカヤックも欲しいのですが、K-1は自分には少し幅が広すぎるんです。今度ダグ社長に折り畳めるニヤックを作って欲しいと云って貰えませんか?」
それはお客様相談センターに頼んだ方が確実なのでは…と思いつつも、ニンバスのラダーはFC社製であることを思い出した。
「彼らはお互いに良いフネを作るという点において、強く影響し合ってるんでしょうね。ニンバス社も定期的にオーナーズミーティングを開催して、社長自らユーザーからの要望を吸い上げているようですから」

早速ニヤックに乗り込んで、龍郷を目指す。

 


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